溺愛トレード
まだ? まだって何が?
「徹平、続きはまた今度ね」と実乃璃は、私を見たまま硬直している徹平のほっぺにキスをした。
「文ちゃん、今お茶入れるから適当にそこら辺に座っててね。うさぎ小屋みたいな部屋だけど、我慢してね。ふふふ」
実乃璃は幸せいっぱいの満面の笑みを浮かべると、小さなハンドバッグから携帯を取り出して「お茶を三つお願い」と誰かに命令した。
「て……徹平…………」
「違うんだ! マジで、そんなつもりじゃなくて。テレビ見てたから、突然実乃璃ちゃんが遊びに来て、それでシャワー浴びたいっていうから貸してあげてて……シャワーの時間が長すぎて、ここでうたた寝してたら、こんなことに」
徹平は嘘をついたり言い訳をしたりするような男じゃない。
怒ってるわけじゃなくて、あまりのショッキングな光景に絶句してるだけ。
それに、私だって(かなり強引だったけど)瀧澤さんと半日デートしちゃったから徹平を責めるなんてことできない。