溺愛トレード

 まだ? まだって何が?


「徹平、続きはまた今度ね」と実乃璃は、私を見たまま硬直している徹平のほっぺにキスをした。


「文ちゃん、今お茶入れるから適当にそこら辺に座っててね。うさぎ小屋みたいな部屋だけど、我慢してね。ふふふ」


 実乃璃は幸せいっぱいの満面の笑みを浮かべると、小さなハンドバッグから携帯を取り出して「お茶を三つお願い」と誰かに命令した。




「て……徹平…………」

「違うんだ! マジで、そんなつもりじゃなくて。テレビ見てたから、突然実乃璃ちゃんが遊びに来て、それでシャワー浴びたいっていうから貸してあげてて……シャワーの時間が長すぎて、ここでうたた寝してたら、こんなことに」


 徹平は嘘をついたり言い訳をしたりするような男じゃない。

 怒ってるわけじゃなくて、あまりのショッキングな光景に絶句してるだけ。


 それに、私だって(かなり強引だったけど)瀧澤さんと半日デートしちゃったから徹平を責めるなんてことできない。


< 41 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop