溺愛トレード
あたふたと「乃亜、違うから」としてる徹平と、愕然とフローリングに座っている私の真横で、バサッと真っ白なテーブルクロスが宙を舞った。
真っ黒な制服を着た人たちがテキパキとティーセットを用意し、フルーツ柄の陶器の大皿が運ばれてきて丁寧にマカロンが並べられていく。
「お茶がはいったから、ゆっくりしていていらしてね」と実乃璃だけは、いつものペースを崩さない。
「み、実乃璃! 徹平に変なことしないでよ!」
テーブルクロスの敷かれた、ただのちゃぶ台。そこだけが、選ばれた上品な演出で様変わりしている。
部屋は相変わらず、パチンコの雑誌や景品が散乱してるけど、実乃璃は(というか実乃璃の家のお手伝いさんたちが)一瞬で実乃璃らしい空間を作り上げてしまう。
私がいつも徹平の部屋で愛用しているクッションを自分のもののように膝に抱えて、ティーカップにミルクを流し込んだ実乃璃は、ん? と首を傾げた。