溺愛トレード
なんだか訳がわかんないけど、とにかく二人の結婚は実乃璃が考えているより遥かに進行しているってことだ。
「それで、あの…………」
いつもハキハキとしている桐谷さんが珍しく言葉を濁した。
「加瀬様は……実乃璃様のご親友と伺っておりますが、豊様とはどのような…………」
で、ですよね?
そうだよ。桐谷さんたちからしてみれば、私の正体が気になるよね。
瀧澤さんは誰がいようとかまわずにベタベタしてくるし、誤解を招くような発言のオンパレードだ。
昨日なんて、売り場のスタッフと「ここをもう少しこうしたら……」なんて話をしてただけで「働く乃亜は、聡明で美しい!」と大喜びして、私を抱きしめた。
「話せば長くなるんですけど……どうやら、実乃璃はちょっとマリッジブルーみたいなんです」
「それは豊様に何かご不満でも?」
「いえ、まさか! 瀧澤さんは本当に素晴らしい方です。実乃璃も瀧澤さんが好きです。でも一生を決めることだから少し心配なだけです。
それはあくまで実乃璃自身の問題で、瀧澤さんに落ち度があるわけじゃないんですけど、何故か私が瀧澤さんと一緒に過ごすことになりまして……私から見ても何の心配がないことを理解させてあげられたら、きっと二人は幸せな結婚ができるはずです」