溺愛トレード

「今朝は月に一度の理事が集まる定例会議なんだ。今月から、クールビズの導入でラフな服装をすることになってる。おかしいかな?」


「いえ、全然」


 むしろ、新鮮だし、ラフな服装でもだらしなさを感じさせないのは体からにじみ出ている高貴なオーラのせいなのかもしれない。

 瀧澤さんに案内されて、うちのアパートの玄関扉の三十枚分くらいありそうな玄関扉が開く。


 中は吹き抜けで、高価な絵画や壺がセンス良く整列させられている。

 白を基調とした壁や床。汚してしまわないか心配で靴の裏をみると瀧澤さんに「こっちだよ」と手をひかれる。


「あ、ちょっと! やめてください」

 
 少し乱暴に手を振り払うと、瀧澤さんは予想以上に傷ついた顔をする。


「さっき桐谷さんに教えてもらいました。瀧澤さんと実乃璃の新居を建ててるって……」


「ああ、それは親たちが勝手に盛り上がっているんだよ。家なんてどうせ一つじゃ足りないんだから、好き勝手に作らせておけばいい」


 家なんてどうせ一つじゃ足りない!?

 普通はその一つのマイホームを建てるために定年退職までのローンを組んで、お父さんは毎日通勤電車に揺られて頑張って働くんですよ!!


「そんなことより、はやく君に見せたいものがある」



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