溺愛トレード

「徹平くん」

「え、あ? はい……」


 徹平は突然名前を呼ばれて、飲もうとしていたビールを少しだけテーブルにこぼした。


「乃亜、すごくいいよね。実はかなり気にいってる」


「た、瀧澤さんっ!?」


 唖然としてる徹平の前で、瀧澤さんはいとも容易く私の肩に腕をまわしてきた。


「僕はね、実乃璃とは本気で結婚していいと思っている。いつか自分は親の決めた相手と結婚することになる。それは、ずっとわかってた。わかっていて、幼い頃から知っていた実乃璃が婚約者になればいいと密かに願ってた。

 実乃璃は純粋で素直だ。あんなに可愛い女の子、僕は実乃璃以外にいないと思う。再会が嬉しかった。実乃璃も喜んでくれていたのが、もっと嬉しかった。

 だけど、実乃璃は僕の前から消えたんだ。乃亜を残して」


「いや、だから、瀧澤さん。消えたわけじゃなくて……実乃璃はですねっ!」


 瀧澤さんは、私の肩を抱いたまま徹平にふわりと優しく微笑んだ。


「実乃璃は君に気があるのかな?」


「いやいや、だから、それは……」


「ないと思います。実乃璃ちゃんの狙いは、俺じゃなくて乃亜です」


「へ、わたし?」


 徹平が珍しくズバッと発言したと思えば見当違いなことを言った。


「実乃璃ちゃんは乃亜とことに未練があって、結婚前にまだまだ乃亜と遊びたいだけなんじゃないですか? 知りたいのはいつも乃亜のことばかり。俺なんて、完全に当て馬ですよ。

 いいですか? ですから、瀧澤さんのライバルはその隣にいる乃亜なんじゃないかと思われます」


「ちょっと! 徹平! いい加減なこと言わないでよ!」





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