溺愛トレード
「わかってると思うけど、俺が落ち着いて触れられるのは乃亜だけだから……」
「うん……」
プロトコールを出て、実乃璃は大人しく家に帰っていった。瀧澤さんのことをもう一度真剣に考えるって約束をして。
二人きりになった私と徹平は、部屋に帰る前に徹平にこびりついた口紅を落とそうと公園にやってきたわけだけど、時間が時間なだけに、公園には人影もなく、徹平の手はいつもより少し大胆な場所を撫でた。
「徹平、待ってよ。部屋に帰ってからにしよ」
「嫌だ、ちょっとだけ……」
私の体なら、なんでも知ってる手に、思わず目をつぶって全部任せてみたくなる。
こういう時は徹平だって男になる。
お好み焼きと外人女の化粧の匂いとマティーニが混ざったあべこべな香りがする徹平のスーツに顔をうずめる。
背中を下から上に駆け上がる快感に「んっ」と声を漏らすと、徹平の腕が腰にまわる。
「瀧澤さんを毎日見てると、俺なんか物足りないないでしょ?」
「そんなことない。徹平は徹平のいいところ……いっぱいあるよ」