溺愛トレード

 そのまま急かすように、徹平の手を引いて自分の部屋に入った。

 徹平は私の彼氏だ。

 触れ合う肌と肌を何度も確認しながら、狭いアパートの一室で徹平を感じる。

 徹平の息づかいを感じながら、徹平の腕の中で目を閉じた。



 最初に徹平と抱き合ったのも、このアパートだったっけ…………バイトが終わって、安い居酒屋でお酒を飲んで、少し酔ってたんだ。

 付き合ってもなかなかそういう事をしてこない徹平に不安を感じて、自分から徹平を押し倒した。

 

『好きならどうして抱いてくれないの?』

『ごめん、タイミングがわからなかった……』



 後は流れに身を任せて……二人ともはじめてで、道徳心がちくちく痛んだ。何かとてつもなく悪いことをしているんじゃないかと心配になった。

 自分から押し倒して、先に逃げ出したくなったのは私の方で、徹平は『もう無理』と聞いたこともないような色っぽい声をだして、私の腰を引き寄せた。



 ああ……この人、男なんだ。


 友だちの延長線にいるわけじゃない。付き合うってこういう事なんだって、少しずつ理解して私たちは一つになった。



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