溺愛トレード
船には二人だけしか乗っていないようだ。
瀧澤さんは最後尾の操舵室みたいなとこで、風を受けて映画俳優みたいだ。
徹平は、どうしてるんだろう?
私の部屋に一人取り残されたのかな?
何も持ち出さずに私だけがいなくなってたら、徹平は心配して警察に…………いや、多分届けないだろうな。「どうせ、実乃璃ちゃんの仕業だろ」って開き直って、そのまま二度寝してそうだ。
どこまでも眩しいコバルトブルーの青空と、エメラルドグリーンの海に囲まれて、波に激しく揺られる。
心地よい潮風が頬にあたって、眠気なんてもんは一切ぶっ飛んだ。
やがて船は、小さな小島に到着して速度を落とし桟橋に停まった。
「あの! 瀧澤さん、こういうの困ります!」
瀧澤さんは錨を落として、縄を桟橋に投げると「こういうのって?」と陽気な声をあげた。
桟橋には既に十人ちかいお手伝いさんらしき方々が勢揃いされていて、瀧澤さんが投げた縄で桟橋と船を固定させた。
「行こうか、乃亜」
「行きませんっ! せっかくのお休みなのに、アパートに帰してください!」
瀧澤さんはハーフパンツにビーサンの足を桟橋にかけて、このエメラルドグリーンの海に負けないくらいの素敵な笑顔になる。
「うん、だから。乃亜がしたいって言っていた、ゴロゴロ、をしに来たんだよ。さあ、はやく行こう」
「え、あっ? ちょっ!?」