溺愛トレード
よいしょ、と降ろされたのは白い珊瑚が削られタイルのように並べられた小道の上で、その道の先には真っ白な家が見えた。
「この島は、一周歩いても十分足らずの島で瀧澤家の所有物だ。ほら、向こうが実乃璃の家の島」
向こう、と指差された方を振り返る。私たちが上陸した海岸の方向だ。
実乃璃の家の島には、何回か遊びに来た(強制連行でした)ことがある。
「あっちに比べるとうちは半分くらいの大きさだけど、植物の数は比べものにならないくらいに多いだろう? 母の趣味でね」
「そうですね。瀧澤さんのお宅は本邸も緑豊かですもん。あっちの島は実乃璃がわがまま言ってヘリポートをつくったりテニスコートをつくったりしたから、その度に木が伐採されてました」
珊瑚のタイルは、少しでこぼこしていて、差し出された手を遠慮なく握りしめると瀧澤さんは嬉しそうな顔をする。
「瀧澤さん、私……昨夜実乃璃に手紙渡しました」
「へー、それで? 実乃璃の様子は?」
どこか他人事のように私の手を引く瀧澤さんをキッと睨みつけた。
「実乃璃も会いたいそうです。魂抜けたみたいに急に大人しくなっちゃいましたよ」
瀧澤さんは、口元を押さえてくすくすと笑うだけ。