合縁奇縁~去る者は追わず来る者は拒まず


「俺、無償で精子提供してあげてもいいっすよ、その代わり父親としての責任放棄前提で」


なんて山城の言葉が、聞こえたような、聞こえなかったような。

わたしが歳でも精子が若けりゃ受精の可能性も高くなるわ、なんて喜ぶあたり結構酔いが回ってる証拠だ。

病院探さなきゃ……、なんて具体的な体外授精の段取りを頭に描きかけたところで、わたしは思考を停止させた。


疲れた、眠い。

明日が休みで良かった。


このまま帰って、明日は昼まで寝倒すぞぉ、と気合を入れて立ち上がった。


「マサさん、おかんじょう。って……、あれ……」


視界が回って身体が揺れた。

膝が笑って歩けない。

わたしとしたことが飲み過ぎたみたいだ。


「悪いけど君、責任とって春さんを送ってって。

直ぐそこのセントラルマンションだから」

「仕方ないっすね。

まぁ、飲ませた俺にも責任ありますから、送ります」

春さん、掴まって、としゃがんだ彼の背に倒れこんだわたしの両腕を引き、山城が立ち上がった。

微かに漂うムスクの香りに、若いくせに生意気な、と心の中で毒づいてみる。


「ごっそさんでした」

「おう、よろしくな」


そんなやり取りを他人ごとのように聞きながら、わたしは意外に大きい彼の背に負われ、その心地良さに思わず目を閉じた。
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