ミッション#メロンパンを争奪せよ!
「…ハハハ」
先輩の笑い声が聞こえて目を開けた。



「やっぱ…俺ってダメだよ。」
先輩は優しくそう言った。

「…変な告白しといてさ、結局こうなったらビビってんの…。ホント…、俺ってダッセ。」
先輩の笑顔は少し悲しそうだった。


「…私だって、ダメですよ。」

「…。」

「現実から逃げたくて…、先輩を逃げ場所にして…、甘えて…、あの人の事を振り切りたかった。」

「…そっか。」

「ごめんなさい…先輩…。」


つー、と頬に涙がつたった。

自分が情けなかった。
罪悪感でいっぱいだった。



「そうだな。俺達、二人ともダメだ。」
先輩はそう言って、優しく頭をなでてくれた。

私はゴシゴシと、涙をぬぐった。


「…だから俺たちは、今こうなっちゃいけないって事だよ。」

「え…?」

「二人とも、一緒に居たらダメになってしまうんだって事。俺は俺で、紗緒ちゃんを抱きしめた事が正しい事かわからなかった。本当にこれでいいのか、わからかなかった。紗緒ちゃんは紗緒ちゃんで、自分の行動に罪悪感を抱いたんだろ?」

「…はい。」

「だから、ダメなんだ。例えばこれで俺たちが結ばれたとしても、紗緒ちゃんの中には残ったままだろう?」

「…何がですか?」



…そんな事を言っといて
本当は自分で分かっていた



「唯人の事が。」



「……。」
やっぱり…

「そんなままじゃダメだよ、俺達。…紗緒ちゃん。君が唯人と結ばれるか、俺と…、結ばれるか、どちらにしてもやっぱり、唯人に気持ちは伝えなきゃいけないんだ。君の片想いに、一回ピリオドをうたなくちゃ。」

「…そうですね…。」


先輩の言葉は何か難しいような気がして、簡単なような気がした。




スッ…と先輩が何かを拾った。

「さっきの…手紙…。」

クシャクシャにして
抱きしめられたときに手から落ちたやつ。


「これを渡さなくちゃ、どっちにしたって始まらないよなぁ?」


ニッ、と笑った先輩の顔は、いつもの少し意地悪な楽しい笑顔だった。




「…はいッ。」



私はその手紙を受け取って
最後はせめて、と思って


できるかぎりニコッとわらった。
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