【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中



「久し振りだね。李玖君。
 君が急に他の病院に行ってしまって僕も悲しいよ。

 君もうちの病院に居たら、いい想いをしたものを。
 親父が結婚相手を探せって煩くてね。

 今は仕事の合間に、同時進行で女のこと付き合っているんだ。

 香穂が言ってた話は本当なのかい?
 李玖君が僕を好きだって。

 そうか……僕を好きだったんだね。
 八番目の彼女でいいならどうだい?」



はっ?
八番目の彼女?


ペラペラと都合のいい話ばかりしてくるそいつに、
今まで以上の幻滅を抱く。


何でアタシ、こんな奴好きだなんて思ってたんだろ。


そんな夢から覚めさしてくれたのは香穂と見せつけられたSEX。

しかもアイツは、香穂だけじゃなく次から次へと
その場にいた女たちと体の関係を繋げて、
私の方も見て『やりたいなら一緒にどう?』って。


その瞬間、これはないって思った。




そんな奴が再び現れて、私を八番目の彼女にですって?



有り得ないし。




抗議したいけど、絞り出したい声は出てくれないし
体は一気に冷えて、息がしづらくなってる。


呼吸をしたいのに……思うように息が出来ない。







「ちょっと泰典先生、私が居ながら8番目の女なんて必要ないでしょ。
 それよりも、私以外もう全て終わらせてほしいって
 お願いしてるじゃないですか?」





目の前で香穂は、相変わらずの素振りで
バカみたいに豊満な胸を武器にお願いごと。



「泰典先生、私、用事思いだしちゃった。
 李玖と今から買い物したいの。

 先に戻ってて貰って言いですか?」



そんな声の後、誰かが私の腕を爪を立てるように掴んだ。


ヤバっ、体が震え出した。
何とか場所から動きださなきゃ。



思考回路とは裏腹に言うことを聞いてくれない体。



お願いだから二人とも、何処かへ消えて。
絶対にこの二人の前で倒れるなんてぶさまなことはやりたくないの。 





自分に暗示をかけるように、何度も何度も心の中で『大丈夫』を繰り返す。




『その手を離さないか』






過呼吸で意識を消失する間際、
誰かが私を助けてくれる声が聞こえた気がした。





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