哀しみを越えて
2.見えない心。
私の心は汚い。そんなの自分でもわかってる。
だけど、自分ななりに磨きたかった。
ありのままの私を受け止めてくれる人なんてこの世にいない。
誰かの心を見える目があれば簡単なのに…。
派手なカッコで男の人に会ってみたい。
化粧だってしてみたい。綺麗な女の子になってみたい。
だけど、夏向が告白をしてきたときは、
私はいつもと同じカッコ。スウェットパンツに、ただのTシャツ。
そのときの私で彼は私と一緒になることを望んだんだもの。
今の私。派手な私よりもずっといいんだと思った。
私は、夏向の心の中に入りたかった。
「重い」って思われてもいいよ。これが本当の私だから。
本当の私を愛せる人はこの世にいるのだろうか?
そんな人はいないと思うよ。
別々のお腹から別々の環境で育って…。
そんな十人十色の中から出会って少ししか一緒にいない。
でも出会えたことは一生といっていいほどの奇跡に近いもの。
私は見えない心を無理矢理、見ようとしていた。
夏向は一体、私をどういう存在だと思っているのか。
それも夏向の心のなかにあるものだと思うから。
私に対する感情も全部、相手の心の中にあるもの。
私たちが目で見えるものなんて、綺麗なものばかり。
見えない心の中で汚いものも綺麗なものも感情として現されているんだと思う。
感受性を育てれば、心も成長するのかもしれない。
そう思ってからは、私はよく歌を聴くようになった。
ロックはキライ。私はアイドルにも興味はない。
街中で見つけた、一瞬でその歌の中に入れたCDを人生始めて買った。
何度も何度も聞き込んだ。はじめはすぐに気に入ることはできなかったが、
自然と目が潤むようになってきた、共感出来たのだ。
心は一体、どこにあるのか?っと聞かれると、
すぐには答えられない。でも考えればその答えは見つかった。
『体、全部』にあるのではないだろうか。っと。
心はたとえ、小さいものでも体の隅々までつながっているんだと思う。
愛し合った人たちは心を通じ合わせ、求め合う。
身体を触れ合いさせながら、心で気持ちを表現する。
私は哀しみを越えて、その答えが見えた。
人は人生で何回傷ついて行くのだろう…。
傷ついてまた立ち上がる心はどこで育てられるのだろう。
自殺する人の心も見てみたい。哀しみを味わって自殺の道を選んだ者。
私は哀しみを味わっても自殺には手を出さなかった。
その悲しみで強くなれたから。
ましてや、それでまた生きていく希望を見つけたから。
みんなは、どんな見えない心をもっているのだろう。
そして、夏向は私をどう見てる?
私たちが出会ったころはまだ知り合い程度の人だった。
街中で走っているバスでお互いの顔を覚えた。
夏向はその時、イヤホンをつけた音楽プレイヤーを使っていた。
私を数秒、見つめた。私は見つめられるのは苦手で…すぐ空した。
…なんで?
…なんで私を見ているの?
…見つめないで。
そんなことを考えているうちにバス停までついた。
私がバスを降りると夏向も降りてきた。
そっと声をかけられたのが私たちの始まり。
『どこの人?』
『ここが、地元です』
『そっか』
『….。』
会話がすぐ途切れてしまったこの空気が私は嫌いだった。
だからすぐに歩きだそうとした。
そこを夏向が引き止めた。
『ち、ちょっと。』
『え?』
『一目惚れしました』
『え?』
『連絡先…教えてください。』
『え?』
戸惑うばかりで何も反応できなかった。
でも、夏向は私が教えるまでは動きもしなかった。
これは本気なのか?疑いもあったが、頼れるオーラが出ていた彼を信じた。
『はい。これ…』
『あ、ありがとう。』
『…。』
また、反応できずに立ち止まってしまった。
次こそは!っと思った時に足を動かせた。
これが運命になるなんて神様も思わなかった。
地味な私が出逢いが訪れることなんて…。
…今のは何だったんだろ…。夢なの?
そう疑いが止まらなかったが、家へ帰った。
帰ってすぐに机に向かった。鉛筆やキャンパスが散らばってる机。
そして、思うがままに手を動かせた。
心を手と通じ合わせながら…。そしてできた作品は展示会への応募に使う。
緊張と不安を胸に、書き始めた。部屋に聞こえるのは鉛筆の音だけだった。
集中感が漂うとき、突然、携帯がなった。
開いたら新着メールが来ていた。メールアドレスは見覚えのないものだった。
『先ほどのものです。鈴木夏向といいます。よろしく。』
思わず声に出して本文を読んだ。
『あぁ…。さっきのバスの時の人か。』
私はすぐに返信をうった。
『こちらこそ、よろしく。沼本知亜といいます。』
絵を書いている途中で携帯が鳴ったから、手が止まってしまった。
一度、止めたらもう書き始めれないのでこれは捨てる作品になった。
それでも、メールの差出人の夏向には苛立ちもなにもなかった。
『仕方ないよ』そう思った。もしかしたら、この時から特別になっていたのかも…。
もう一度書こうかと思ったが、夏向から返信が来ることが予想できたので
今日は1作品も書かなかった。ただ携帯のメール着信を待っていた。
薄暗くなってきた部屋。春の今日、5月の空は青く海の色とよく似ていた。
ゆらゆらと揺れているカーテンを見つめていた。何も考えずに。
コンビニで買ってきたコーヒー缶を開けた。
その音に反応した愛犬のチワワの『どんぐり』が寝室へと走っていった。
…ブーッ..ブーッ…。テーブルの上で携帯が動いた。
『知亜って呼んでいいかな?』
そんなの言わなくていいのに。そんなくだらないことを考えながら
夜までメールをしていたが、返す前に私は寝てしまった。
翌朝、目が覚めるとベットの上で、携帯を握り締めたままだった。
すぐに返信をしなければ!っと焦った。
『すみません。寝てしまいました…。』
夏向は朝早くに仕事へ行っていたので返信は夜来た。
『全然いいよ!遅くまでごめんね。』
何故か、すごく返信が優しくなってきたことを感じだ。
優しさや人気さに惹かれてしまう私にとっては落とし穴だった。
次第に、夏向への想いが込み上げてきた。
「…この人のこと好きかも…。」
ぼーっとしている時に頭にこの感情がよぎった。
だけど告白は考えていなかった。
振られることが怖くて前に進めていなかった。
仕事はコンビニのアルバイトだった私にとっては
仕事場での出会いも何もなかった。
だから、こんな気持ちや感情が初めてで何もかも手こずってしまっていた。
『電話しない?番号は○○○-○○○○-○○○○だよ。』
そう言ってきた夏向が恋しく思った。
簡単に相手に吸い込まれやすい私は電話で緊張してしまう。
メールの本文に載っていた電話にかけたらすぐに出た。
『もしもし…』
『おっ!知亜!』
『こんばんは。』
『…。』
直接、会ってるわけじゃないのに緊張して言葉が出なかった。
『知亜?』
『ごめんなさい』
『あのさ…』
『なんですか?』
『俺と付き合ってくんない?』
『えっ…!?』
告白された事の少ない私にとっては大チャンスだった。
私もメールなどで夏向に惹かれていたので答えは決まった。
だけどすぐに口に出なかった。
『あの…』
『ん?』
『えーっと…』
『よろしくお願いします!!』
『ありが…』
自分の答えを口で言った恥ずかしさで
すぐに電話を切ってしまった。
そしてすぐメールに切り替えて謝った。
『切っちゃってすみません』
『いいよ。恥ずかしかった?』
『はい…。』
『かわいいじゃん。』
携帯と私とどんぐりしかいない部屋で一人照れていた。
私をかわいいという人なんて極少ないから。
私が返信する前に夏向からもう一通、メールが来た。
『あのさ、思ってたんだけど、敬語使わないで!』
『あ…分かりました。』
送信ボタンをおした時に気づいた。
また敬語を使って返信しちゃった。今、言われたのに。
すぐにもう一通送った。
『わかったよ』
焦ってばかりだけど、
今、私と夏向は繋がった。
この人とこれから共に幸せを分かち合うんだ。
だけど、自分ななりに磨きたかった。
ありのままの私を受け止めてくれる人なんてこの世にいない。
誰かの心を見える目があれば簡単なのに…。
派手なカッコで男の人に会ってみたい。
化粧だってしてみたい。綺麗な女の子になってみたい。
だけど、夏向が告白をしてきたときは、
私はいつもと同じカッコ。スウェットパンツに、ただのTシャツ。
そのときの私で彼は私と一緒になることを望んだんだもの。
今の私。派手な私よりもずっといいんだと思った。
私は、夏向の心の中に入りたかった。
「重い」って思われてもいいよ。これが本当の私だから。
本当の私を愛せる人はこの世にいるのだろうか?
そんな人はいないと思うよ。
別々のお腹から別々の環境で育って…。
そんな十人十色の中から出会って少ししか一緒にいない。
でも出会えたことは一生といっていいほどの奇跡に近いもの。
私は見えない心を無理矢理、見ようとしていた。
夏向は一体、私をどういう存在だと思っているのか。
それも夏向の心のなかにあるものだと思うから。
私に対する感情も全部、相手の心の中にあるもの。
私たちが目で見えるものなんて、綺麗なものばかり。
見えない心の中で汚いものも綺麗なものも感情として現されているんだと思う。
感受性を育てれば、心も成長するのかもしれない。
そう思ってからは、私はよく歌を聴くようになった。
ロックはキライ。私はアイドルにも興味はない。
街中で見つけた、一瞬でその歌の中に入れたCDを人生始めて買った。
何度も何度も聞き込んだ。はじめはすぐに気に入ることはできなかったが、
自然と目が潤むようになってきた、共感出来たのだ。
心は一体、どこにあるのか?っと聞かれると、
すぐには答えられない。でも考えればその答えは見つかった。
『体、全部』にあるのではないだろうか。っと。
心はたとえ、小さいものでも体の隅々までつながっているんだと思う。
愛し合った人たちは心を通じ合わせ、求め合う。
身体を触れ合いさせながら、心で気持ちを表現する。
私は哀しみを越えて、その答えが見えた。
人は人生で何回傷ついて行くのだろう…。
傷ついてまた立ち上がる心はどこで育てられるのだろう。
自殺する人の心も見てみたい。哀しみを味わって自殺の道を選んだ者。
私は哀しみを味わっても自殺には手を出さなかった。
その悲しみで強くなれたから。
ましてや、それでまた生きていく希望を見つけたから。
みんなは、どんな見えない心をもっているのだろう。
そして、夏向は私をどう見てる?
私たちが出会ったころはまだ知り合い程度の人だった。
街中で走っているバスでお互いの顔を覚えた。
夏向はその時、イヤホンをつけた音楽プレイヤーを使っていた。
私を数秒、見つめた。私は見つめられるのは苦手で…すぐ空した。
…なんで?
…なんで私を見ているの?
…見つめないで。
そんなことを考えているうちにバス停までついた。
私がバスを降りると夏向も降りてきた。
そっと声をかけられたのが私たちの始まり。
『どこの人?』
『ここが、地元です』
『そっか』
『….。』
会話がすぐ途切れてしまったこの空気が私は嫌いだった。
だからすぐに歩きだそうとした。
そこを夏向が引き止めた。
『ち、ちょっと。』
『え?』
『一目惚れしました』
『え?』
『連絡先…教えてください。』
『え?』
戸惑うばかりで何も反応できなかった。
でも、夏向は私が教えるまでは動きもしなかった。
これは本気なのか?疑いもあったが、頼れるオーラが出ていた彼を信じた。
『はい。これ…』
『あ、ありがとう。』
『…。』
また、反応できずに立ち止まってしまった。
次こそは!っと思った時に足を動かせた。
これが運命になるなんて神様も思わなかった。
地味な私が出逢いが訪れることなんて…。
…今のは何だったんだろ…。夢なの?
そう疑いが止まらなかったが、家へ帰った。
帰ってすぐに机に向かった。鉛筆やキャンパスが散らばってる机。
そして、思うがままに手を動かせた。
心を手と通じ合わせながら…。そしてできた作品は展示会への応募に使う。
緊張と不安を胸に、書き始めた。部屋に聞こえるのは鉛筆の音だけだった。
集中感が漂うとき、突然、携帯がなった。
開いたら新着メールが来ていた。メールアドレスは見覚えのないものだった。
『先ほどのものです。鈴木夏向といいます。よろしく。』
思わず声に出して本文を読んだ。
『あぁ…。さっきのバスの時の人か。』
私はすぐに返信をうった。
『こちらこそ、よろしく。沼本知亜といいます。』
絵を書いている途中で携帯が鳴ったから、手が止まってしまった。
一度、止めたらもう書き始めれないのでこれは捨てる作品になった。
それでも、メールの差出人の夏向には苛立ちもなにもなかった。
『仕方ないよ』そう思った。もしかしたら、この時から特別になっていたのかも…。
もう一度書こうかと思ったが、夏向から返信が来ることが予想できたので
今日は1作品も書かなかった。ただ携帯のメール着信を待っていた。
薄暗くなってきた部屋。春の今日、5月の空は青く海の色とよく似ていた。
ゆらゆらと揺れているカーテンを見つめていた。何も考えずに。
コンビニで買ってきたコーヒー缶を開けた。
その音に反応した愛犬のチワワの『どんぐり』が寝室へと走っていった。
…ブーッ..ブーッ…。テーブルの上で携帯が動いた。
『知亜って呼んでいいかな?』
そんなの言わなくていいのに。そんなくだらないことを考えながら
夜までメールをしていたが、返す前に私は寝てしまった。
翌朝、目が覚めるとベットの上で、携帯を握り締めたままだった。
すぐに返信をしなければ!っと焦った。
『すみません。寝てしまいました…。』
夏向は朝早くに仕事へ行っていたので返信は夜来た。
『全然いいよ!遅くまでごめんね。』
何故か、すごく返信が優しくなってきたことを感じだ。
優しさや人気さに惹かれてしまう私にとっては落とし穴だった。
次第に、夏向への想いが込み上げてきた。
「…この人のこと好きかも…。」
ぼーっとしている時に頭にこの感情がよぎった。
だけど告白は考えていなかった。
振られることが怖くて前に進めていなかった。
仕事はコンビニのアルバイトだった私にとっては
仕事場での出会いも何もなかった。
だから、こんな気持ちや感情が初めてで何もかも手こずってしまっていた。
『電話しない?番号は○○○-○○○○-○○○○だよ。』
そう言ってきた夏向が恋しく思った。
簡単に相手に吸い込まれやすい私は電話で緊張してしまう。
メールの本文に載っていた電話にかけたらすぐに出た。
『もしもし…』
『おっ!知亜!』
『こんばんは。』
『…。』
直接、会ってるわけじゃないのに緊張して言葉が出なかった。
『知亜?』
『ごめんなさい』
『あのさ…』
『なんですか?』
『俺と付き合ってくんない?』
『えっ…!?』
告白された事の少ない私にとっては大チャンスだった。
私もメールなどで夏向に惹かれていたので答えは決まった。
だけどすぐに口に出なかった。
『あの…』
『ん?』
『えーっと…』
『よろしくお願いします!!』
『ありが…』
自分の答えを口で言った恥ずかしさで
すぐに電話を切ってしまった。
そしてすぐメールに切り替えて謝った。
『切っちゃってすみません』
『いいよ。恥ずかしかった?』
『はい…。』
『かわいいじゃん。』
携帯と私とどんぐりしかいない部屋で一人照れていた。
私をかわいいという人なんて極少ないから。
私が返信する前に夏向からもう一通、メールが来た。
『あのさ、思ってたんだけど、敬語使わないで!』
『あ…分かりました。』
送信ボタンをおした時に気づいた。
また敬語を使って返信しちゃった。今、言われたのに。
すぐにもう一通送った。
『わかったよ』
焦ってばかりだけど、
今、私と夏向は繋がった。
この人とこれから共に幸せを分かち合うんだ。