囚われた、あなたの腕の下。

グッと、二つの胸に力が込められた。


「たぁっ!!」

「痛い?だけど、俺の方がすっごく痛かったから。愛理に捨てられて」


自分が、浮気をしたのに……なんて言い草なんだろうと、腹がたつ。


「と、るが……浮気、したからっ!」

「浮気?浮気か……だって、愛理を、傷付けるのが嫌だったんだ。でも、結局逃げられるなら、最初からこうしておけばよかったんだよね」


意味が、わからない。

友達から「浮気してるよ」って聞かされて、あたしは十分なぐらい、傷付いた。

なのに、「傷付けるのが嫌」だった?

どんな屁理屈なんだと、問いただしたくなる。


――――コンコン。


その音は、奥の扉から聞こえてきた。
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