囚われた、あなたの腕の下。

助手席に、乗せられる。

そして、反対に回って運転席に彼は腰を下ろした。


「で?別れるなんて、いきなり言うのはなんで?」


優しく覗き込む彼の髪が、サラリと揺れる。

あたしは、勇気を持って聞いてみた。


「……この、間の……火曜日、なにしてた?」


一瞬にして、顔色の変わる彼、だけど本当に一瞬。
すぐに表情は戻り、考えるようなそぶりを見せた。


「火曜日は、残業……」

「嘘……新山さんから電話があって、大事な書類を忘れてるって言われた。だから、連絡したんだもん」


これは、事実。
みるみる固くなる表情。

それが、辛い。
そしてあたしは、彼の後ろうなじを、指差す。


「この……痕は、誰に付けられたの?」

< 6 / 58 >

この作品をシェア

pagetop