甘いキスは放課後に



「あっ、先生、お邪魔しまーっす」


「あはは……」


挨拶なんて今更だ。忘れてたとでもいう風に紗恵が言葉を向けたのは、聞いて驚け例の教育実習生だ。私がキスしたいと思った、あのイケメン(笑)。


苦笑いで返した実習教師――これからそう呼ぶことにしよう――は、コンビニ弁当を手に仕事用の椅子に座っている。「芸能人顔負け」の言葉がこれほど似合う人に出逢うのは初めてだったけど、これほどコンビニ弁当が似合わぬ人も初めて見た。


「君達……本人の目の前で本人に対する恋心について話をするのはどうかと思うよ……」


「それは違う」


即座に否定した。ここで「反射神経抜群♪」などとは思わない。


「え?」


どうやら実習教師は勘違いしているみたい。


「そうそう。まだ断言できるわけじゃないからね、恋って。
 でもまあ、私はそう思ってるけど?」


紗恵の「どうよ?」視線を受け流し、実習教師に視線を移した。



 
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