ピエモンテの風に抱かれて
頼りになる先輩

トリノと日本を結ぶ直行便はない。イタリア国内にあるローマやミラノの大型空港、もしくはヨーロッパの主要都市を経由する。



今回はドイツのフランクフルトを経て、20時間もかけて成田空港に到着した。



「………そう、そうなの。だから今回は仕事で来たから神戸までおばあちゃんに会いに行けなくて、ごめんなさい。おじいちゃんによろしくね」



ターンテーブルでスーツケースをピックアップする間に、まず樹里がしたことは母親側の祖父母に電話を入れたことだ。



日本に来る度に、必ず母の故郷である神戸にも足を運んでいた。しかし今回はそんな余裕があるはずもなく、祖母の残念そうな声がいつまでも耳に残る。




− さて…と、しっかりしなきゃ! −




携帯を切って気を取り直し、小さく背伸びをした。お客さんのロストバケージがないかを慎重に確認し、ツアー客全員が無事に税関を通るのを見届けると…、



さあ、日本への第一歩だ。鉄製の大きな自動ドアが左右に開く。



すると真っ正面に見えたのは、




− あ… −

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