ピエモンテの風に抱かれて

こんな賑やかな一行を連れ、まさに珍道中さながらの箱根の観光ルートは、芦ノ湖を巡った後にロープウェイで硫黄の匂いが独特な大涌谷へ。目の前に迫る富士山をパノラマで感じながら、次はケーブルカーや登山電車で移動するといったものだ。




『うわあ、綺麗ね!』




移動先の美術館の庭園では、この季節ならではのバラやアジサイが咲き誇っている。またしてもお決まりの撮影大会が始まった。



『おーっ、本当に綺麗だなあ。みんなで写真撮ろう。ほら、アスカさん、ジュリさんも一緒に!』



このグループは元々見知らぬ同士のメンバーだったが、皆あっという間に仲良くなった。どこに行っても元気に動き回って談笑し、カメラを構える。

他の外国人とすれ違えば、万国共通語の < ハロー > が飛び交う。必ずと言っていいほど先に挨拶するのは、こちらのグループだ。心底明るいラテン民族の特徴だろう。




− やっぱり好きだな。イタリア人て、いつも陽気で −





樹里は彼らの楽しそうな笑顔を見ていると、忙しいと思う気持ちも半減していた。思わず顔に笑みがこぼれると…、



















一組だけベンチに座って肩を落としている白髪の夫婦が目に入った。



『あの…、どうかしましたか?』

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