ピエモンテの風に抱かれて
新たなる衝撃

「今日も一日お疲れ様でした! お客さんもだいぶ日本に慣れてきたみたいですね」



「そうね、お箸の使い方から何から何まで一から説明しなきゃいけないのは大変だったけど。今回は旅慣れたお客さんが多くて助かったわ」



飛鳥はそう言いながらベッドの上にお菓子を並べ始める。今日も無事に一日を終えた二人は、恒例のビールタイムを迎えようとしていた。



「わあ、今日のお菓子は期間限定の紀州梅のポテチですか。限定品なんてイタリアでは滅多に見掛けないから嬉しいです!」



飛鳥はポテトチップスの袋を珍しそうに眺めている樹里に続けて言った。



「でも最終日のフリータイムも気は抜けないわよ〜。私達は何が起こっても大丈夫なように、ホテルで待機してなきゃいけないし。ある意味一番大変な日かも」



彼女の言う通りである。イタリアで樹里が日本人ガイドをする時も、自分の目の届かないフリータイムこそ、緊急感が走るものなのだ。



「本当にそうですね。あ、先輩? ビール飲む前にまだやることはありませんか?」



東京での宿泊も残すこと三泊。しかし……














樹里が予想もしていなかった事件が、





今まさに起ころうとしていた −。

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