片恋綴
数日後、美春が例の男に振られた、と結城が忌々しそうな顔で教えてくれた。

付き合うのは賛成出来ずとも、可愛い妹が振られるなどあってはいけないようだ。

──やっぱり極度のシスコンだ。

何度も舌打ちをする結城にそう思った。

「しかし、こうなると貴様に美春をやるのも……」

それはそれで納得いかないようだ。我儘と身勝手を絵に描いたような男で、こいつの恋人を不憫を思った。不憫なんてものではない。別れることをお薦めしたいくらいだ。

こいつのいいところなんて、顔くらいなものだろう。

先日思ったことなど脳裏からすっぱりと消し去ってそう思った。

「障害がないなら、行かせてもらうけどな」

俺はわざと挑戦的に言う。すると結城は顔を歪め、ち、と大きな舌打ちをした。

──鼻で笑うんじゃないのか。

そのことに俺は口許を緩めた。

極度のシスコンはよく可愛い妹を見ているはずだ。なので、そんな兄貴が舌打ちをするということは、見込みはあるのだろう。

「泣かせたら殺す」

結城はそれだけ言うと、静かに去っていった。

一応、デザイナーをしている奴は本来は暇ではないはずだ。寧ろ忙しいはず。なので、わざわざ報告だけの為に来たのだろう。

やっぱり、いいところはあるのかもしれない。


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