片恋綴
佐南さんは今日、私が永久さんと食事に行くことは知っていた。そして、真宏さんから話を聞けば、自ずと私が振られるであろうことも予想がついただろう。

──だからこうして来てくれたんだろう。

いや、違う。知っていた兄が鉢合わせたのだ。でも、わかっていて、佐南さんはこうして私を待っていてくれた。

「俺のところに来ればいい、て言ったけど、そんな簡単にも行かないだろ」

私はそれに小さく頷いた。

「お前は、俺のこととか、その振られた相手のこととか、何にも考えないで、自分の気持ちだけ考えればいいんだ」

そう言われた途端、涙が溢れてきた。さっき、あんなに電車で泣いたというのに、まだ涙は尽きない。

そう、今の私は辛くて辛くて、仕方無い。

泣きたいだけ泣きたくて、永久さんだって辛い片想いをしてるんだとか、私を想ってくれる佐南さんの前では笑っているべきだとか、そんなことを考える余裕なんてないのだ。

佐南さんが私を想ってくれることに感謝しようとか、何も考えられない。

ただ、好きな人に受け入れてはもらえなくて、辛い。


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