片恋綴
「泣けばいい」

佐南さんに頭を撫でられ、私は大声で泣いた。

電車の中で泣いたのとは違う。本当に気持ちを吐き出す為に泣いた。

振られる為に告白したんじゃない。伝えたかった。伝えて、受け入れて欲しかった。

──本当はあの人の彼女になりたかった。

泣き続ける私に、佐南さんはずっと隣にいてくれた。ただ、それだけで私は安心して泣くことが出来た。

夜空に私の泣き声が響き、その中に時折、煙草の臭いが混じった。



「貴様、いつまで泣かしている」

私の涙が漸く尽き始めたとき、家の中から兄が出てきた。

「俺が泣かしたわけじゃねぇだろ」

それに佐南さんがうんざりしたように言う。

「やはり、貴様を義弟になど認めないからな」

兄は吐き捨てるように言い、私の背中を無理矢理押しながら家の中に入った。夜道に佐南さんを一人、残して。

──佐南さんにお礼を言うことは出来ずに、その夜は兄の淹れてくれたミルクティーを飲んで眠りについた。






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