片恋綴
「ああ、いい。呼ばれたから来たんだが、直ぐに帰れって言われてさ」

お兄ちゃんらしい。

兄はなんというか、妹の私でもよくわからない性格なのだ。勿論いい兄ではある。私には。ただ、周りから見たら更にわからないだろう。

「……振られたのか」

何でこんなにも簡単にばれてしまうのか。やっぱり、涙の跡が見えてしまったのか。

「はい」

私は小さく答える。それから、息を吸い込んだ。

「お前はさ、周りを見過ぎなんだよ。もっと、自分のことだけ考えてればいい」

私より先に口を開いた佐南さんが何を言いたいのかよくわからなかった。

「え?」

思わず間抜けな声が出てしまう。

「真宏から聞いた。俺がお前を困らせてるって」

そんなことが言いたかったわけじゃないのに、と少しばかり真宏さんを恨んだ。

「だから、周りを見過ぎなんだ」

そこから、何でそういうことになるのか。

けれど、佐南さんが優し過ぎるのだけはよくわかった。


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