片恋綴
成るべくワックスもピンも使わずに、簡単なアレンジにしていく。

「随分簡単ね」

触られている感覚に気付いてか琴子が言ってきた。

「だって、ほどけなかったら困るだろ」

思い切り他意を込めて言ってやると、琴子は馬鹿じゃない、と返してきたが否定はしなかった。

そのことにまた胸が痛む。

下げられたワンピースがずっと目に入っている。

あれを目の前で、僕の為に着て欲しくてプレゼントしたのに、琴子は違う男の為にあれを着ていくのだ。

「ほら、出来た」

僕は琴子の肩をぽん、と叩いた。

少しだけダイエットした彼女の肩は思っていたよりずっと細かった。

そして、その肩を抱き締めることは決して叶わないのだろうな、と思った。


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