片恋綴
そんなふうにして、私の恋は始まった。淡い恋心を少しずつ膨らませていくように、私は少しずつ見た目を変えていった。
幼馴染みに協力してもらいながら、まず髪を栗色に染めて、次に少しだけ短くして、少しだけ痩せて、軽く化粧もするようになって、服装もお洒落するようになって。
少しずつ、少しずつ変化していった。蛹が羽化するように綺麗になれたら、と。
その度に祐吾君は似合いますね、とか、可愛いですね、とか、綺麗ですね、とか言ってくれた。
それでも自惚れたりはしなかった。自惚れることなんてなかった。
理由は簡単。
そこに熱などなかったから。
だから自惚れないし、勘違いもしない。至極単純なこと。
「綺麗になるのって、楽しいんですね」
祐吾君が言う。
淡々とした彼の喋り方が好きだ。無表情な横顔が好きだ。
……綺麗だと言ってくれる声が好きだ。
「うん、楽しい。永久(とわ)には馬鹿じゃない、て笑われるけど」
幼馴染みの永久はそう笑いながらもよく協力してくれる。美容師である永久はいつも私に似合う髪型を考えては「これなら祐吾君も可愛いって思ってくれる」と言ってくれるのだ。
「そこに愛があるからですよ」
祐吾君がぽそりと呟く。