片恋綴



「あの人だよ」

原崎さんは千歳さんの質問に素っ気なくカウンター内にいる琴子さんを指差す。琴子さんは少し前からどんどん綺麗になり、お客さんのなかには彼女目当ての人も多い。

「確かに美人ね」

千歳さんはちらりと琴子さんを見てから言った。なんかまるでその視線は、衣川さんという人の想い人の予想に私は端から入ってなどいないかのようだ。

ということは、私は誰かに想われるような魅力などないということなのかな。

「そういえば、最近祐吾君がポチちゃんの写真ばかり現像してるよ」

原崎さんが突然こちらを見て笑顔で言った。

祐吾君は高校時代の後輩で、未だにたまに連絡をとっていて、カメラマンの先輩から貰ったらしいカメラでよく私を撮ってくれている。

通勤の道程で彼の住むアパートの前を通るのだが、そのときにいつもベランダから顔を覗かせている。

……多分、私を好きでいてくれる男の子。


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