片恋綴
「何か食べます?」
琴子さんは優しい声で千歳さんに問い掛けた。そういうのは、本当に素敵な人だと思う。
「何か甘いもの」
衣川さんは千歳さんを慰めるように背中に手を置きながら琴子さんに言った。それに頷く琴子さん。
……私は本当に何も知らない。
原崎さんのことなんて、本当に何も知らない。それなのにやっぱり落ち込むことはなくて、むしろ仕方無いとも思ってしまう。
「あいつのことは気にするな。腹を立てて当たってるこどもと変わらない」
衣川さんの言葉が耳に届く。
「……でも、私はやっぱりまだ真宏に優しくして欲しいと思ってる最低な女なの」
千歳さんは泣きながら言った。千歳さん まだ原崎さんのことが好きなのだろうか。
「前みたいに、普通の関係に戻りたい……。付き合いたいとかじゃなくて……ただ、普通に出来たらって……」
千歳さんはそう言ってから、少しだけ顔を上げた。切れ長の瞳には涙が溢れている。