片恋綴



「あ、ポチちゃん」

バイトの帰り道、自転車を押しながら歩いていると偶然原崎さんと会った。原崎さんは何やら大きな荷物を持っている。

「荷物、大きいですね」

私が言うと、原崎さんはでしょ、と少し面倒臭そうに返してくれた。真っ暗な夜道にそこに原崎さんがいるというだけで嬉しくて。

やっぱり好きなんだ、と実感する。だって、一目見るだけで心が高鳴るのだから。

それを好きだという以外、なんと言えばいいのだろう。

「明日の撮影に使うものなんだ」

原崎さんは私に並びながら言った。行く方向は違うというのに、こうして足を止めてくれることが嬉しくて。

「大変ですね」

こうして他愛ない会話を交わせることが嬉しくて。

私はやっぱりこの人が好きなのだと思う。私なりに好きなんだ。

だから、苦しいと思うことにも蓋をする。


< 63 / 146 >

この作品をシェア

pagetop