片恋綴
「いつでも相談して下さい。実家の犬だと思って」
私は笑顔を作って言った。これも強がりではない。
私しか出来ない形で原崎さんの傍にいられるならそれでいい。この想いがいつか形を変えるときまで。
「ありがと、理生ちゃん」
原崎さんが初めて私の名前を呼んでくれた。それだけで、こんなにも嬉しくなる。
私がこのままでいいと思うのは、原崎さんが私に距離を置いていたから。近付けなかったら。
それでも私なりの好きで今はいい。
いつかこの想いは大きくなるかもしれないし、小さくもなるかもしれない。
「原崎さんの好きな人って、どんな人ですか?」
私は少し大きめの声を出して尋ねた。すると原崎さんは軽くそっぽを向いて、言えない、と小さく言った。