片恋綴



「口説いてなんかないよ。そもそも、俺は女を口説いたりしないし」

「無自覚か。尚更質が悪い」

浩輔君は呆れたように溜め息を吐いた。昔からそうだった。

口説いているつもりなんてないのに勘違いされたりする。いつも、思ったことを言っているだけなのに。

可愛いと思えばそう言うし、その反応が面白ければからかう。そして、その反対だってある。

なのに女たらしだとか、口説いているとか言われる。

別に俺本人は女好きでもないし、女遊びだってしない。

何に関しても思ったままを口にしているだけ。なのに、掴み所がないだとか、空中浮遊する海月だとか言われるんだ。

そもそも、空中浮遊する海月ってなんなんだ。


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