片恋綴


「何処が好きなんです?」

一つずつ諦める要素を増やしていこう思った。伝えるより近くにいたいから。

「小柄なとこ」

少しずつ諦めていこう。

「それ、理由になりませんよ」

ちょっとずつ離れていかせよう。

「お前に話す必要はない」

いつか尊敬として隣に並べたらそれでいい。

「ええ、酷いな」

いつか、心から笑って隣にいて、彼の幸せを祝福出来たらいい。

そんなふうに諦めることを前提にしていても、この感情は間違いなく本物なんだ。叶うはずないなら、少しでも近くにいたいから。

「じゃ、結婚するときにでも教えて下さいよ」

俺が言うと佐南さんは首を横に振る。そう、今のはわざと意地悪を言ってみたのだ。

報われないとわかってて言ってみた、酷い言葉。それでも佐南さんはそれを、俺のいつもの意地悪だと思っているだろう。

それでいい。



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