片恋綴


別に想いを告げるつもりなんて微塵もないからそれでも構わない。
自分とは決して幸せになんてなれないなら、相手の幸せを願うことをしたい。

例えそれが報われずに終わる恋だとしても。

「隠し撮りなんてするからですよ」

俺はくすくすと笑いながら言う。

それに佐南さんが溜め息を吐く。

それで十分なんて思わないけど、仕方無いって諦める。

多分この想いを告げても気持ち悪がったりはしない人。それでも受け入れてはくれない人。

だから気持ち悪がられると自分に言い聞かせ、臆病な振りをする。

一番嫌なのは近くにいられなくなることだから。

なんか、結婚言い訳ばかりの想いなんだと思う。それでもそれを恋と呼ぶことは出来なくて。


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