あなたのギャップにやられています

「雅斗君、忙しいのね」

「うん。あっ、そうだ……」


私は雅斗のイギリス行きの話を、百合ちゃんに相談した。


「私、すごい! って舞い上がったのに、雅斗のテンションがすごく低くて。なんでだろう」

「うーん」


そのイギリス人アーティストがどれだけすごい人なのかは、ちっとも知らない。
そもそも、英語やカタカナの長い名前を苦手とする私は、なんとか賞を取って、なんとかっていう有名な師匠についていた唯一の弟子で……とか解説されてもピンとこない。

だけど、スカウトの声がかかるなんてチャンス、誰にもあるわけじゃないことだけはわかる。
しかも海を越えているんだよ?


それなのに、百合ちゃんから、思っていたような返事が返ってこない。
「どうしたのかしら?」とか「照れ隠しじゃない?」なんて言われると思っていたのに、唸ったままビールを口に運んでいるだけだ。


「百合ちゃん?」

「冴ちゃんさー」

「ん?」


気のせいか、百合ちゃんが呆れた顔をしている。

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