あなたのギャップにやられています

画家の木崎雅斗が、ここにいる。
本当に好きなものを描いている、彼が。

そう思うと、うれしくて……なんだか泣きそうだった。
やっぱり彼には、好きな絵を描いていて欲しい。


「うん。よし」


突然雅斗が筆を置き、すごく満足した顔で立ち上がる。


「描けたの?」


モデルをやっている間は、私達の間に言葉はない。
だけど、その緊張が解けたのだと感じた。


「うん」


出来上がるまで見せないと言われていた私は、そっと洋服を身に付けて、彼のそばまで歩み寄る。
もうすべてを出しきったというような雅斗は、絵の前から動かない。

珍しく、襲わないし。

彼に近づくと、不意に腕を引かれて抱き寄せられる。


「冴子、ありがとう」

「ううん」


なんだか泣きそうだ。
こんなにやりきったという顔をしている雅斗を始めてみたから。

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