あなたのギャップにやられています

「見て、いい?」

「あぁ」


力を緩めた雅斗から離れて振りかえる。

なにか言葉を発しようと、思った。
だけど、なにも出てこない。
その代わり、ブワッと涙が溢れ出てくるのを感じる。


「どうしよう、私……」

「ん?」


なにも言えない代わりに、雅斗に飛び付く。


「冴子、まだブラしてないだろう?」

「うん」

「襲われたいとか?」

「うん」


茶化した言葉だったけど、いつものトーンとは違う。
きっと私の気持ちが伝わっているんだと思う。

私を強く抱きよせた雅斗は、それから動かなくなった。


「俺、こんな絵が描けるって自分でも発見だ」

「うん」


彼が描いた私は、すごくすごく幸せそうな顔をしていた。

本物よりほんのちょっと大きめの胸の張りすら伝わってきて、今にも動き出しそうな躍動感がある。

伏し目がちにしている表情は、一見自信なさ気だけれど、その奥が輝いているというか、力を感じる。
もしも雅斗に私がそう映っているのなら、なんだか嬉しい。

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