あなたのギャップにやられています

「木崎にイギリス行きを決意させる、ためか……」

「……はい」


私が再び小さく頷くと、部長は溜息をついた。


「難しいな、男と女って」


まさか、部長からそんな言葉を聞くなんて。
会社の上司として尊敬しているけれど、部長だって男なのだと感じた。


「木崎は必死で頑張ると俺に宣言した。だから、木崎のことは心配してない。
だけど、冴子は本当にそれでいいのか?」

「……はい」


部長の言葉に目が泳ぐ。

雅斗が留学を決意したという報告は、私の胸を弾ませた。
だけど、その一方で、私たちの別れは決定的になったのだ。
本当にこれで引き返せなくなってしまった。


俯いたまま目の前に置かれたアイスコーヒーに手を伸ばしたものの、飲むことができない。
少しでも頭を動かしたら、涙がこぼれてしまうから。


「フー」


大きな溜息をついた部長は、「お前、強いな」とつぶやく。

強くなんかない。すごく弱い。

本当は、雅斗に行ってほしくない。ずっと私のそばに、いて欲しい。

大好きな人の門出を、こんな気持ちでしか見送ることができないのだから。

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