あなたのギャップにやられています

アーチボルドさんもまわりの仲間も、俺の受賞を自分のことのように喜んでくれた。
だけど俺は……受賞したのがもう一枚の裸体の方でなかったことに、少し落胆していた。


もしかしたら、画家としての技術は、風景画の方が優れていたかもしれない。

だけどやっぱり、冴子の裸体のような絵を認められたくて描いてきたんだ。
自分のすべてをかけて、描き終った時、抜け殻になってしまうような魂のこもった絵を。

そしてその裸体は、自分でも納得のいく渾身の一枚だった。



そんな俺に気が付いたのか、アーチボルドさんがアトリエで誰に向かってというわけではなくつぶやいた。


「絵は誰の心を動かすかはわからない。
その人にとって一番でも、他の人にとっては違うかもしれない。
だけど、それでいいじゃないか。
値がつく絵が、必ずしも心を打つとは限らない」

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