あなたのギャップにやられています

アーチボルドさんの言葉を聞いて、俺はハッとした。

審査員の目が、風景画を優れていると認めただけだ。
冴子だけが、この絵の価値をわかってくれればいいんだ、と。


ひとりのために描きたいという、もともと持っていたはずの意識を、イギリスに来て忘れかけていたのだと気が付いた。

賞を取らなければ、絵が売れなければ……そんなことばかり気にかけるようになっていた俺は、絵を描き始めたころの気持ちを思い出していた。


それからいい具合に力が抜け、自分でも納得できる絵が数枚描きあがり、賞を取った作品以外に、イギリスで初めて値がついた。

それは、想像していたよりはるかに高い値で売れて驚いた。


もらいすぎだと、アーチボルドさんに言ったけれど、彼は「それが木崎の評価なんだから、もらっておけ」と言ってくれた。

リアンで始めた小さな第一歩が、こうして花を咲かせたのだ。

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