あなたのギャップにやられています

受賞してから、様々なメディアからインタビューを受けるようになった。
美術館からの問い合わせも入るようになった。


だけど、俺の頭の中はいつも冴子でいっぱいだった。

女々しいけれど、インタビューを受けるたびに思わず彼女のことを口にしてしまった。
それほど俺の中は、彼女いっぱいだったのだ。


冴子は俺の受賞を喜んでくれているだろうか。
いやもしかして、もう俺のことなんてすっかり忘れ、別の男に抱かれてしまったのではないだろうか。

一度、集中力が途切れると、冴子のことを考えてはため息をついた。


待っていると言ってくれた彼女だけど、俺は"元気で"とだけ残して、なんの約束すらしてこなかった薄情な男だ。


それからしばらく、俺は絵を描けなくなった。
何枚描いても、そこに魂は宿らなかった。

そんな俺を見たアーチボルドさんは、潮時だと笑った。

もうお前はひとりでやっていける。
そろそろ愛しい人を迎えに行けと。

それは、イギリスに渡って、1年半経った頃のことだった。

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