あなたのギャップにやられています

冴子のことを話してあったわけじゃない。
だけど、あの裸体を描いたとき、アーチボルドさんはその女が俺の愛している人だと気がついたようだった。


そして、いくつかの絵に値がつくようになった俺は、日本に戻る決意をした。

イギリスで学んだものは数多い。
初めて画家として名前も認識してもらった。

あとは……描きたい絵を描くだけだ。



帰国を控えて、戸塚部長に連絡を入れた。


『木崎じゃないか。受賞、おめでとう』

「ご存じでしたか。ありがとうございます」

『当たり前だ。冴子もすごく喜んでいたぞ』


思いがけず冴子の名前を聞いた俺は、胸が張り裂けそうだった。

俺の受賞を喜んでくれたのか……。
もしかして、まだ俺のことを待っていてくれているのか?

そんな一縷の望みが、俺を支えてくれた。

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