ブラッディ トゥ ナイト

僕は複数の地方連盟の合同で行われる審査までしかしていない。

もう少し頑張れば、その上の全日本連盟が主催する審査にも出れたのだが、僕は弓道に興味が無かったため、五段でやめにした。

「久々だが、まぁ問題は無いだろう」

弓の弦を引き、欠陥が無いか確認する。

自分の腕より学生時代以来、弓の方が心配だったが大丈夫そうだ。

火茂瀬は僕の視界の隅に停まる車に寄り掛かる。

弓に矢を引っ掛け、的である文月の額を狙う。

弓の軋む音と僕らの呼吸の音だけが静かな空間に流れる。

「うぅ……」

狙いを定めていると、文月が目を覚ました。

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