蕾は未だに咲かないⅠ

幕間「誰かの記憶」





 ――真っ暗だった。


 きっと不安で仕方ないに違いない、そう思うと抱き締めずにはいられなかった。

 きっと不安なのに。

 それなのに一切声が聞こえないんだ。


 ギュッと手を握り締めて、じっと耐え忍んでいる姿は酷く大人びていて、見ている方が泣きたくなる。


 どうして俺らは弱いんだろう。


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