蕾は未だに咲かないⅠ
簡単に砕かれる、希望の可能性。
さらりと、さらりと言っちゃったこの人。やっぱり拒否権はないみたいだ。
あたしはそれにただ「はい」と頷いて、ココアを飲んだ。すっかりぬるくなったそれは、さらに心を冷やしていく。
──知らない。
あたしはこれから、全く知らない此処で生活する。
あの、刺すような視線に捕らわれて暮らすのか。精神が持ったら良いけど。
輔さんは微笑んだ。
別に愛想良くされたくなんかないけれど、相手を逆撫でしないようにする為なのだろう。まるで、猛獣を扱う見せ人みたい。
この人の仮面の下が何なのかを考えるだけで怖い。