蕾は未だに咲かないⅠ


思わずあたしは眉を寄せ、その手を目で辿っていく。


輔さんは笑って、そのまま、あたしの腕を掴んだ手を引く。あたしは彼の胸元につくかつかないかのところで、踏ん張って止まった。

耳元で、「ねえ」と言う声が聞こえた気がする。


無視、したい。


「暇でしょ?俺、相手してあげよっか。」

「…」


ああ、やっぱりこの人は。

あたしは寒さにわずかに唇を震わせる。彼はそれを動揺と読み取ったのか、また笑う。


< 39 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop