蕾は未だに咲かないⅠ


輔さんの動作が止まり、緩やかに目線がポケットの方へと向けられる。

あたしは黙って天井を仰ぎ、1つ、まばたきをした。涙も、安堵の息も出ない。


ただ、胸の奥で黒い渦が巻いた。それが渇望と罪悪感だということに気付くまで、しばらく時間がかかった。


「もしもし……は?」


電話に出て早々、輔さんは表情を曇らせる。

不機嫌ではない、ただ面倒だとでも言うように溜め息をつく。そして、あたしの上から退いた。


< 43 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop