蕾は未だに咲かないⅠ



中庭にはグレーの高い壁が周囲を囲んでいた。

雨に濡れて全身が冷えていくのを自覚しながら、中庭を横切り、木に手をかける。


玄関になんて回れる訳がなかった。


それまでの道のりで姿を確認されたらアウトだし、それから玄関で捕獲されるのは目に見えてる。

此処に人が居るのは間違いない。もうじき食事の時間だし、日向君も居るだろう。


鶴来という人に命令されているのに、勝手にあたしを逃がすはずがない。


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