☆SUKI SAKE☆
心の中で自分自身をナイフで突き刺すように責めていたあたしを後ろからぎゅっと矢野は抱きしめた。


なんで、なんで抱きしめたりなんてするの?あたしは、矢野を裏切ったんだよ。



「バカだな、しぃは。何のために俺たちがいるんだよ。俺たちはそんなことでしぃを軽蔑したりしない。離したりなんてしない。心配しなくても俺たち、俺はしぃを嫌いになったりなんてしないから」


「・・・矢野。でも、あたし矢野を裏切ったんだよ。でも、ごめん。それでもあたしは矢野の側から離れたくないんだ。だから嘘を吐いた。それなのに結局それも苦しくて矢野が冷たいのも苦しくてもう壊れちゃうかと思った」


「しぃ、こっち向いて」



そっと顔だけ矢野を見るように動かした。ちゅっと音を立てて触れられた唇。絶対に目を閉じないで。目を開けたままのキスがいっばい降ってくる。


恥ずかしい。でも、あたし今、矢野とキスしてるんだ。代わりでも何でもない。矢野自身とキス・・・してるんだ。


涙は全然止まらない。
それでもやめたくないの。



「しぃ、俺たちはちゃんとしぃを救うからしぃは俺たちを信じててくれればいい。もう一人で抱え込むなよ」



降り注ぐキスの終わりに告げられた言葉にあたしの中の爆弾が処理された気がした。
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