夜香花
「お前も父様の帰還がわかったのね。さ、お出迎えに行きましょうね」

 軽くあやすだけで、赤子は泣き止んだ。
 そして、きゃきゃ、と笑い声を上げる。

 深成と長老が正門に着く前に、幼子に腕を引っ張られた真砂と出会う。
 深成はその場に膝を付いて、頭を下げた。

 深成の腕の赤子が、またむずかりだす。
 真砂がひょい、と片手で赤子を抱き取った。
 とん、と自分の胸にもたれさすように抱くと、赤子はまた、すぐに明るい笑い声を上げた。

「父様、お庭の桜、もう咲きますよ。桜が咲いたら、また上のほうまで連れて行ってくださいね! 姫が大きくなったら、皆で行きましょう。母様も、昔は登ってたってお聞きしました」

「ああ、そうだな。まぁ、母様が鈍ってなければ、皆で行こう」

「まぁっ。木登りぐらい、まだ出来ますっ」

 少し口を尖らせて言う深成に、ははは、と真砂が笑顔を返す。

 無邪気に駆け回る幼子と、小さな手を振り回して笑う赤子。
 赤子を抱いたまま、笑いながら深成を促して歩いていく真砂。

 幸せそうな家族を眺め、長老は穏やかに微笑んだ。



*****終わり*****

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