たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「お前、来週数学のテストあるらしいな?ちゃんと勉強しろよ」

 突然話を変えられた。支樹もそうだが、兄もこうして話を切り替えることがある。

「大丈夫だよ。簡単だし、満点取る自信あるよ」

 私は少し口調を強めた。

「よしよし」

 私の頭をクシャクシャッと撫でながら言った。

「まったく、せっかく遊びに行くのにいきなり小テストの話をするのだから」
「あぁ、ごめん」

 そういうと、ふかぶかとお辞儀した。私は思わずふきだしてしまった。兄もつられて笑った。兄にお見送りをしてもらい、家を出て、バス停に行くと、ちょうどバスがとまっていたので急いで乗り込んだ。息切れをしながらあいていた席に座った。外の景色を見ながらバスに揺られていた。次の停留所で降りるため、ボタンに手を伸ばしたが、先に誰かに押された。手の中にあるお金を払ってバスを降りた。駅に向かったら支樹がもうそこに立っていた。

「ちゃんと来たな」
「もちろん。十五分前に来たでしょ?」

 彼は笑いながらうなずいた。
 朝早く出たせいで映画館はまだ開いていなかった。時間まであと十五分待たなくてはならなかった。

「十五分って結構長いね」
「そうだな、そのへん軽く散歩するか」
「うん、じゃあいこうか」
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