たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 冷蔵庫を開けてみてみるとりんごヨーグルトがあったので、それとまだたくさん残っているオレンジジュースを取り出して自分専用のグラスにジュースを注いでから、ジュースを片付けようとした。

「俺のも」

 気がつけば新しいグラスを片手にして待っている。

「もっと早く言ってよ」

 兄のグラスにもジュースを入れてから冷蔵庫に戻した。一口ヨーグルトを口にした。

「ほんとにいらないの?」

 念のために確認した。

「あぁ、これだけで十分だ」

 そう言ってグラスを軽く上にあげたあと、ジュースをゴクゴクと飲んだ。軽い朝食を食べ終えたあと、身支度を整えてインターネットで上映スケジュールを確認してから家を出た。バスに乗って、二人用の座席に座って鞄の中に入れておいた小説を読み始めた。

「今日、朝から夜までバイト?」
「そうだ、少し気が重い」

 眠そうに目をこすりながら言った。

「支樹は?」
「ん?何?」
「バイト。しないの?」
「高校生のころはしていたな」

 今はやる気が無いのだろうかと思った。
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